1話目



見渡せば広大に広がる田畑。

耳を澄ませば聴こえて来る鳥の囀り。

どちらかと言えば田舎に属される長閑な街でのお話であります





「誕生日おめでとう〜」

と、中年の女性の声が部屋に響く。

「ありが・・・」

その声に反応した少年であったが、彼女の口元を見るや否やそこで言葉が止まってしまった。

そのにやつきは何だ、と。

「ちょっと見せたい物があるの〜」

と、少年の目の前に一枚の紙切れが差し出された。

「何々、勇者募集・・・?応募資格は16歳以上なら誰でも良い?」

少年は、不意に渡された紙の不意な内容に対し、キョトン、とした表情で女性の方を見上げた。

「そうそう、ちょっとお城に行ってちょっと稼いで来てみない〜?」

「別に構わないけど・・・」

案の定、ロクな事考えて無かったな、と少年。

しかし、どうせ暇だし、と考えながら手渡された紙を更に眺めた所で、

「って・・・妙に給料安いな、これ。実質居るかどうかも怪しい大魔王とか言う奴を倒さなきゃ儲からない仕組み?で、道中に貰った報酬等はきっちり巻き上げる・・・って」

何処の詐欺商売なんだ?と思いながら女性へ紙を突っ返した。

「えー、国がやってるから大丈夫なんじゃないの〜?ほら、お隣さんだって勇者になりにいったみたいだし?」

文句を言うなといわんばかりの表情で、再度少年に紙を渡した。

「はぁ、コレなら畑耕した方がマシなんじゃないの?」

大の大人がそんな事考えて大丈夫なのだろうか?と心配になってきた。

「畑掘っても金が埋まってる訳無いじゃん?、ほら〜大魔王倒せば・・・」

大人しく了承しなさい、と言わんばかりに返す女性。

「いや・・・だから・・・」

何をどうしたいんだこの人は、と反論しかけた所で、

「食費だって浮くし〜」

「・・・」

「光熱費も一人分浮く・・・」

「めんどくせ」

「家、年頃な人間を家に置いておく程お金ないのよね〜」

少年は、結局それが本音かよ、と呆れながら女性を見た。

「ああ、もう分かった、出てけば良いんだろ、出てけば。」

コイツ、本当に母親なのか?と思いながらも少年は返した。

「そうそう、物分り良くて助かったわ〜」

思い通りになった、と満面の笑みを返す。

「覚えてろよ」

少年はやるせなさをこみ上げた表情で彼女を見上げると、小声でそう呟いた。







そんな訳で、少年は家を追い出されたのでありました。

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