序章




「私としては冒険者となる事を勧めるがレヴィはどう思う?」

 とある建物の一室でゆっくりと、力強さを持った男性の声が響いた。

 室内には程よく歳を重ねた男性とレヴィと呼ばれた少年、カイル・レヴィアの姿があった。

「冒険者……ですか?」

 カイルは男性の問い掛けに対し何かを恐れるかの様に口を開いた。

(冒険者になれと云う事は、僕はギリギリの成績だったということだろうか。しかし手応えは上

位レベルだった筈なのに。…まぁ、厳しいで有名な学校な訳だし仕方ないか。)

「ふ、ここには私以外の人はいない、もっと柔らかい言葉で良いぞ」 

男性が口元に笑みを浮かべていた

「…はい」

 カイルは視線を落とし呟いた。

「大丈夫だ、レヴィが心配するような事は無い。君の成績は非常に優秀だ。私としては、若い内

に他の経験を積む事の出来ないまま国に仕えるよりも、良い経験を積める冒険者を行ってみる方

が将来の君にとって非常に有益になると思っている」

「え・・・?」

 カイルは思わず目を見開き、男性の方へと視線を送った。

「そこで、まずは冒険者として経験を積んだ後に国王軍に仕える道を用意したのだがどうかな?」

(確かに学校を卒業してすぐ国に仕えるのは面倒そうだ。折角学園のトップが直々にお前は成績

優秀だから特別な対処としてこの道を勧めてくれてる訳だからなぁ、これに乗るのも悪くないか

もしれないかな。)

 カイルは左手で自分の髪をそっと触った。

 その仕草に気付いてか、男性が言葉を続ける。

「勿論、お金の心配をする必要は無い、私が勧める以上国に仕えた場合と同額の給料は保証させ

る様手配しておく」

 その言葉を聞いた途端、カイルの口元が僅かに緩んだ。

(国に遣わされるってのも色々面倒そうだし、金銭面でも不自由しない状態で自由が強い冒険者

になれるならば特に断る理由も無いよな)

「最終的にはレヴィの判断に任せる。私はその様な道がある事を勧める事しか出来ないからな」

「……分かりました、その方針で行きたいと思います」

 カイルは一つ礼を入れ男性に返答をした。

 その言葉を確認した男性が放った『頑張れよ』という励ましの言葉を背にカイルは部屋を後に

した。



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